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太田市美術館・図書館; 太田市美術館・図書館;

太田市美術館・図書館, 群馬県太田市

街に賑わいを取り戻す開かれた美術館・図書館

開放的な空間と賑わいを提供する「太田市美術館・図書館」は、美術館と図書館の両機能を合わせもつ、太田駅北口の活性化を目指した新たな街の複合文化施設です。

アラップは、構造設計や環境設備設計、サステイナブルなエンジニアリングサービスを提供することで複雑なデザインの実現に貢献しています。コスト効率の高い計画となるよう、3次元形状の建物に対しシンプルな鉄筋コンクリート造のコア、鉄骨梁と合成デッキからなるスロープを提案しました。

また、外部に開かれた印象を与えるガラスファサードは眺望だけでなく、自然換気や十分な採光を確保します。視覚的にも機能的にも印象的な本施設は、利用者がそれぞれに好きな空間で過ごし、学べる、居心地の良い環境を提供しています。

プロジェクト概要


5 コンクリートボックス

40%自然換気活用期間 / 年

5ワークショップ

1階南側閲覧エリア。大きな開口部からは自然光が降り注ぎます © Daici Ano

開かれたデザインで街に溶け込む

アラップは立体的な建物の形状に対し、コスト効率に加えて、より建設がしやすくなるようシンプルな提案をしました。鉄筋コンクリートボックスをコアとし、それをスロープ状の軽量の鉄骨造リムでつなぐという構造架構計画です。これにより、利用者が階段を使わずに館内をスムーズに移動できるようにしています。


また、皆が気軽に集える駅前の文化交流施設となるよう、透明度の高いファサードシステムを採用しました。利用者が館内にいながらも街の雰囲気を感じられるような設計とし、外からもガラス越しに本棚やアート作品など、活動を見えるようにすることで親しみやすく居心地の良い空間を演出しています。

街の活性化を目指した新たな街の複合文化施設が太田駅前に誕生した © Akihisa Hirata Archi

複雑な構造を強みに変えたアイデア

5つのコンクリートボックス空間とそれをつなぐ周辺通路のリムが螺旋状に絡み合う構成とすることで、空間に大胆な流動と一体感を生み出し、地上から屋上までを連続的に接続します。


ボックスの床構成はできるだけ薄く、耐震要素を満たすため、剛性の高い耐震壁付きラーメン構造としました。リムは鉄骨小梁と合成デッキとすることで軽量かつ軽快に仕上げています。リムを空調チャンバーとして利用するため、合成デッキを鉄骨梁下に配置し、デッキを天井材とすることで、意匠・構造・設備の調和を図ったデザインとなっています。

年間40%を自然換気でまかなう

1年の40%以上が自然換気に適しているため、風の取り込み口となる換気窓の設置、窓の大きさや配置を慎重に検討し、穏やかな風が館内を流れるようにしています。冬の厳しい季節風は遮りつつ、春や秋に吹く穏やかな風を積極的に取り込み、空気の流れをつくることでやさしい空気環境を構築しました。

空間ごとに適した明るさを目指す自然採光も採用。屋上の植栽は雨水だけで育つ計画としています。また、建物がガラスに覆われているため、詳細な熱負荷検証を行い、利用者にとって快適な空間としながらもエネルギー効率にも配慮した環境計画を実現しました。

2階アートブックコーナー。開放感を感じる抜け空間と奥行きある景色が広がります © Arup

市民の声を一体化したゆらぎのある空間

賑わいを取り戻したいという地域の人たちの声により、基本設計時には5回にわたる市民参加型のワークショップを開催し、重要な決定を行う議論の場にしました。建物のゾーニングやレイアウト、リムの巻きつけ方などは議論の場から浮かんだアイデアが反映されています。


幅広い利用者に合わせ、多様な空間を設けることでそれぞれがお気に入りの場所を見つけ、時間を過ごせます。このようなアプローチにより市民の声を取り入れ、館内の異なる施設を一体化したこれまでにない革新的な複合文化施設が誕生しました。

太田市美術館・図書館 太田市美術館・図書館

ガラス越しに館内の活動が見える透明度の高い構造とファサードが一体化したシステムを採用しました © Daici Ano

受賞歴

第12回 日本構造デザイン賞(伊藤 潤一郎)
第59回 BCS賞
2017年 グッドデザイン賞 ベスト100
2018年 日本コンクリート工学会賞 作品賞
2022年 日本建築学会賞 作品賞