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Dr Chau Chak Wing building; Dr Chau Chak Wing building;

Dr Chau Chak Wing棟, シドニー

国際的にも名高い建築家フランク ゲーリー氏による、オーストラリア国内初の建築

シドニーの新たなランドマークとなったのは、有名建築家ゲーリー パートナーズが設計を手がけたDr Chau Chak Wing棟です。建築とエンジニアリングの思想を融合したこの建物は、シドニー工科大学のビジネススクールとして建設された、新しい仕事と学びの場です。

複雑なデザインをエンジニアリングする

波打つボリュームが積層されたそのデザインは、ツリーハウスに着想を得たものです。ファサードには街に呼応した二つの素材が使い分けられ、シドニー中心業務地区に面する西面ファサードはガラス、工業地区であるウルティモに面した波打つファサードにはレンガが用いられています。

まず、不整形なのは床スラブです。事務室、講義室、共用部といった内部の用途に応じて定義された不規則なボリューム。この内部空間の輪郭と外装の描く曲線が等しくなるよう、サイズと形状の異なる床スラブを設け、スラブとカーテンウォールの距離を一定に保つ工夫がされています。

傾斜したコンクリート柱は、それぞれ異なる角度でスラブ端部に接合され、互いに交わり、枝分かれしながら建物外周に沿って編みあげられています。これによって、内部のボリュームを最大限確保するとともに、魅力的な空間を作りだしました。柱は、構造的な安定性を確保するために絶妙な均衡で設計されています。

外装には、波打つファサードの美しい曲線を表現するため、レンガを一つ一つ積み上げる工法が採用されました。アラップのファサードエンジニアはファサード施工者と緊密な連携をとり、現実的かつ革新的、そして耐久性の高い施工方法にたどり着きました。

ゲーリー パートナーズと協働する

アラップは過去にもゲーリー パートナーズと協働した経験があり、ゲーリー自社開発のBIMソフトをベースにしたDigital Projectの使用実績も、シンガポール スポーツ ハブや北京国家体育場をはじめ数多くあります。このBIMの技術をベースに、Dr Chau Chak Wing棟においては、全ての設計コンサルタント間で一つのモデルを共有する方法を取りました。

シドニー事務所のスタッフと、主要施工者であるレンドリースとともに現場に常駐するスタッフが、BIMモデルを介して解析や図面作成、施工のやり取りを行うことで、設計と現場の要求に迅速かつ効果的に応えることができました。とりわけ、スラブの面内応力の処理や構造と他の部位の干渉チェックには有効でした。

このような設計と施工の連携によって、複雑かつ革新的な建築に起こりやすいプロジェクトの中断を、最小限に抑えて進めることができました。

敷地の制約

敷地は、オーストラリア最大級の乳製品メーカー、デイリーファーマーズの倉庫跡地であったため、周辺は建て込み、地下には産業遺産である下水施設があるという、制約の多い敷地でした。

先述の通り、プロジェクトの中断というリスクもはらんでいました。しかし、このような制約された敷地の中で基礎構造を構築するための経済的に合理的な解を、アラップの地盤工学エンジニアと構造エンジニアが導き出しました。

教育の場に革新を

シドニー工科大学では現在メインキャンパスの拡張、校舎の新設を進めており、シドニーにおける教育そして第3期教育(中等教育を終えた人を対象とした教育段階)の第一人者としての地位を確固たるものとするため、教育、研究の方法を抜本的に変えようとしています。Dr Chau Chak Wing棟はその改革の一端を担っています。

また、オーストラリアの環境評価指標グリーンスター(Education Design v1)で5つ星を獲得した、シドニーで最もグリーンな教育機関でもあります。

アラップはさまざまな要素の設計をリードし、この目標達成に向けて重要な役割を担いました。結果として、高性能の外装システムおよび認証木材が採用され、コンクリート、鉄骨、鉄筋には生産時の消費エネルギーの少ないサステイナブルな材料が選定されました。