デュルック・ホワイト・ロータス学校は、インド北東部ラダックにおけるサステイナブルな開発事業のプロトタイプとして、1997年から段階的な建設が進められてきました。マスタープラン、コンセプトから各部の詳細に至るまで、あらゆる設計をアラップとアラップ・アソシエイツの合同設計チームが手掛け、2001年にはまず保育園が、続く2005年には小学校が完成しました。2013年(その後、変更になり現時点の予定は2016年)には、最後の校舎となる高等学校が完成を迎え、乳幼児から18歳まで750名の子供たちの学び舎として、地域の教育の中核を担う施設が誕生します。
設計に課せられたのは、ヒマラヤ山脈の山間部という敷地ゆえの、過酷な気候条件と地震への対策です。これに対し、設計チームは、最先端の環境デザインを主軸に、地場の建材や伝統的な工法を組み合わせた校舎のデザインを構築しました。
このプロジェクトは、チベット仏教デュルック派の高位であるGyalwang Drukpa(チベット仏教学校の総長)の草案に基づいており、資金はイギリスの登録チャリティ団体、デュルック財団の支援で賄われています。設計チームからは、毎年エンジニアか建築士をボランティアとして派遣し、チャリティ団体の大使、そして地元施工業者のサポート役を担っています。
高い評価を受ける学習・教育環境
校舎はフレキシブルかつ、学習に適した素晴らしい空間となっています。この空間を支え るのは、その土地のサステイナブルな建築材料と古来の建設技術です。壁には現場周辺で採石された花崗岩と、現地で製作した日干し煉瓦を用いています。石積 みの外壁と日干し煉瓦の内壁の二重壁とすることで、断熱性と耐久性の向上を図りました。また、屋根はラダックの伝統的な工法を用いて土で葺き、僧院で栽培 したポプラや柳を断熱材として利用しています。土の屋根は重いため、壁と切り離した支持構造を設けることで、インド基準の耐震性能を確保しました。
標高3500mの山間部という立地も、太陽エネルギーの利用という観点からは、大きな強みとなります。
2008年10月に設置完了した太陽光発電システム(PV)は、最大出力42kWpの 能力を有し、施設全体の電力を賄う安定したエネルギー源となっています。また、初めに設置された9kWp分は、校舎の日射遮蔽の役割も担っています。PV のうち60%はアラップ・アソシエイツの寄付によって設置されており、アラップ・アソシエイツはこの実績を2007年のカーボンオフセットに活用しました
それまでは、インフラからの断続的な供給か、ディーゼル発電に頼っていた、学校の電力供給はPVによって大きく変わりました。蓄電池も備えているため、あらゆる供給源からの電力を蓄え、夜間に使用することも可能です。
これまでのラダックでは叶わなかった、質の高い教育環境を実現したデュルック・ホワイト・ロータス学校。今後は、市民のより文化的なニーズにもこたえる施設を目指します。2002年のワールド・アーキテクチュア・アワードでは、ベスト・グリーン・ビルディング、ベスト・エデュケーション・ビルディング、ベスト・アジアン・ビルディングの各賞を受賞しました。

