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フルトン・センター, ニューヨーク

ローワー・マンハッタンを走る10路線、6駅の相互乗換えの効率化と、新たな交通拠点の建設


ニューヨーク市の地下鉄は、20世紀初頭、民間事業者によって敷設されました。当初は各路線が独自に運営管理され、相互の乗り換え等は考慮されていませんでした。その後、ニューヨーク市の管轄に移行し、地下鉄駅の接続が行われましたが、複雑な経路によって、利用客が滞留し、列車のダイヤを乱す事態も発生していました。

ロ-ワー・マンハッタンのフルトン・ストリートは、中でも9路線が交わる、重要な拠点となっており、平日には30万人以上が乗降します。利用客の利便性と列車の運行を改善するため、また、ローワー・マンハッタンの経済を活性化するために、新たなハブ駅の計画が浮上しました。


1,600億円規模のこの巨大プロジェクト、フルトン・センターに、アラップは主要コンサルタントとして参画し、鉄道を運営するMTAに対し、全体プランニングやプロジェクトマネジメント、エンジニアリング、リスクに関するアドバイスを行いました。結果として、フルトン・センターの利便性は大幅に改善し、10路線、6駅の乗り換えが可能になりました。ワールド・トレード・センターにも連絡しています。 

大規模な計画であったため、付随するプロジェクトも多くありました。メイン建物の建設、4つの既存駅の改修、地下コンコースの整備、新たな2駅との接続などが挙げられます。19世紀に建てられた歴史的建築物、コービン・ビル内に新たに地下鉄出口が設けられ、地上レベルのアクセスも改善が図られました。

フルトン・センターの大きな特徴となっているのは、傾斜した双曲面のドームで覆われたアトリウムです。ガラスのトップライトを頂いたドームの側面は、アトリウムの下の方まで自然光を導くため、ケーブルネットに反射板が配されています。アラップでは、パラメトリック・モデリングのツールを採用し、この不均一で複雑なケーブルネットの構造設計を行いました。

ケーブルネットの独特な曲線は、テンション・ケーブルの構造自体がつくり出したものです。数千箇所に及ぶ接合部には、標準的な部材が用いられていますが、箇所ごとに負担する荷重が異なるため、部材は少しずつ異なっています。そのような均衡の上に成り立つため、わずかな変更も、全体の形態や接合部の設計に影響を与えました。

アラップは非常に複雑なケーブル構造の意匠的な側面と構造的な側面を統合するため、コンピューター制御による設計手法を考案しました。この手法を用いて、BIMとパラメトリックデザインをリンクさせることで、各部材を形態によって定義することができるようになりました。結果として得られたのは、即時的にフレキシブルな解を導く“リアルタイム”モデルです。これにより、わずか一つの構造要素の変更であっても、即座に全体構造と付随する要素に反映し、効率的な検証ができるようになりました。

リンクより、ケーブルネットの施工中の映像をご覧ください。