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相馬 こどものみんなの家, 福島県相馬市

こどもたちが安心して過ごせる新たなコミュニティ拠点

「みんなの家」は、伊東豊雄氏の呼びかけにより、クライン ダイサム アーキテクツなどの建築家たちが東日本大震災後に被災地の方々の憩いの場を建設するためにできたプロジェクトです。
「相馬 こどものみんなの家」は、そのプロジェクトのひとつで、被災地である福島県相馬市の公園内に建てられました。
震災後、こどもたちが放射能レベルを気にせず、自由に集まって遊ぶことのできる場所がほしいという相馬市の人たちの願いを叶えるため、Tポイント・ジャパンによる震災復興プロジェクトと協働するかたちで実現しました。
また、このプロジェクトは地盤調査会社から窓のメーカーまで数々の協力スポンサーやサプライヤーによるサービスや製品の提供など、多くの支援と寄付によって実現しています。こどもたちだけでなく大人も安心して過ごせる新たな地域のコミュニティ拠点を建設することを目的に、アラップ東京事務所は構造設計、環境設備設計の分野からサポートをしました。

こどもたちがどこからでも集まれるように建物は円形とし、360度に縁側を設けています。サーカステントを思わせるような赤と白のストライプ柄のスギ板材の外装や、麦わら帽子のような屋根は楽しい印象の建築としています。室内にはそれを支える樹木をかたどった柱が配置されています。リスやふくろうなどの動物たちが柱に一体化した遊び心のあるデザインは、こどもたちが室内にいながらも、まるで自然の中で遊んでいるような気分を味わってもらえるようにとの願いがこめられています。

プロジェクト概要


16 木材格子屋根の直径

60mm集成材の支柱の厚さ

3次元形状の自由曲面屋根

室内空間を印象づけるのは、麦わら帽子のような直径16mの大きな木格子屋根です。20×120mmの小断面の長尺材を3方向に3回重ねることにより、三次元的に編み込まれています。この特徴的な屋根に使われている地元のカラマツ材は、調達やコスト面の条件だけでなく、軽量で非常に柔軟性がある性質から、人の手で運ぶことを可能とし、現場で木材を曲げて3次元形状の自由曲面屋根を組むことにも適していました。

Photo ©Koichi Torimura️

また、屋根は力を受ける外壁との接合部から内外に向け1,500mmずつの範囲と、支柱の接合部付近をかい木ブロックで埋めることにより補強しています。そして外周に向けて、構成する木の層の数を徐々に減らしていくことにより、見た目にも美しい繊細な輪郭の屋根を提案しています。

四季を通して快適な内部空間の実現

穏やかな春から秋にかけては、窓を開けることで自然通風が確保でき、一日中心地よく過ごせる一方、零度以下となる長く厳しい冬も断熱材によって暖かさを維持し、室内を快適に保ちます。
全方位から自然採光を十分にとることで、一年を通じて開放的な気分で過ごせるとともに、こどもたちが本を読んだり、絵をかいたり、自由に遊び回ったりとさまざまな活動に対応する空間を提供しています。
多くの人たちのまごころと協力によって生まれた「相馬 こどものみんなの家」は、自然の光と風、木の温もりを感じられる、地域の新しい憩いの場となっています。

受賞歴

World Architecture Festival賞 World cultural Building 2015部門
第33回 福島県建築文化賞 優秀賞受賞