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Japan Pavilion Dubai Expo 2020; Japan Pavilion Dubai Expo 2020;

2020年ドバイ国際博覧会 日本館, ドバイ

中東と東洋の文化的なつながりを表現したデザイン

ドバイ万博はCOVID-19の影響により1年延期の末、2021年10月に開幕し、半年間の会期を経て、2022年3月に閉幕しました。日本館のデザインチームは、万博のテーマ「Connecting Minds, Creating the Future」を「アイデアの出会い」と捉え、建築や展示においてさまざまな形でテーマを具現化しています。特徴的なファサードや入口に設置された水盤もその一つです。
アラップは、東京とドバイオフィスによる協力体制のもと、構造・環境設備・ファサードエンジニアリング、防火コンサルティングサービスを提供しました。

日本館は開催期間中に人気を博し、大規模パビリオンカテゴリの展示デザイン部門において「金賞」を受賞しました。

 

Explore digital ’JAPAN PAVILION DUBAI EXPO2020’

見る角度によって異なる表情を見せる印象的なファサード

伝統的な文様を表現した立体的なデザイン

日本の折り紙を表現した『組子ファサード(Kumiko Façade)』と命名された立体格子のファサードをデザインするにあたり、建築家は中東の「アラベスク文様」と日本の伝統的な「麻の葉文様」が似通っていることに着目しました。それはシルクロードによる文化の繋がりの名残かもしれません。


風と光を透過する機能的なファサード

待機列のための開放的な空間創出には自立するファサードが必要であったことから、アラップは単層のフレームの平面模様を屏風のように折り曲げて剛性を高める、折版形状とすることを提案しました。折版形状を採用することにより、通常の立体トラスよりも部材数を抑えた効率的なデザインが可能となりました。

小片の三角形状の膜が散りばめられたファサードは、光と風を優しく透過する「皮膜」としても機能し、日よけと風を通す役割を担います。コンセプトの中で課題となった、風にゆらめく膜は、サプライヤーと協働し、膜材を支持するロープ部にスプリングを組み合わせることによって適度に必要な張力を保った、動きのある膜として形にすることができました。

アラップの構造と火災安全設計エンジニアは、耐火被覆のない繊細なファサードを実現するため、早い段階から火災シミュレーションを実施し、安全性を証明しました。

アラップは3D-CADツール使ったVRを作成し、建築家とともに最終的な検証を実施

膜は紫外線に曝露することでベージュから安定した白色になるフッ素樹脂膜材を選定し、レイアウトは光の入り方を考慮して決定しました。また、建設前には建築家とともに3D-CADツール使ったVRによる最終的な検証を行っています。


「水」のイメージを表現した水盤

建築家は「水盤」について、中東と日本における「水」に対する位置づけの違いに着目しました。日本では脅威にもなり得る存在ですが、豊富な水資源は美しい四季を生みだします。一方、中東では水資源が少なく、オアシスに代表されるように水は古くからの憧れの対象でした。これらを踏まえ、両文化の象徴として建物前面のコンコースに接する一等地に水盤を配置することにしました。

水盤は音や視覚から水を感じられるといった涼しげな印象を与えるだけでなく、環境デバイスとしても機能します。水盤の上部を流れる涼しい風は、半屋外空間へ取り入れられる計画としています。さらには、半屋外空間は組子ファサードによる日射遮蔽と、上部に取り付けたビックファンによる気流感の実現により、温熱環境の緩和を図っています。

万博終了後に撤去されますが、建物はリサイクル性および解体容易性を考慮し、ドバイでは一般的なコンクリートは採用せず、鉄骨による構造としています。さらに自立可能な構造の組子ファサードは、容易に部材レベルに分解し、リユースできる計画としています。

複数色に変化する夜間のライトアップ

受賞歴

大規模パビリオンカテゴリ 展示デザイン部門「金賞」