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由利本荘市文化交流館 カダーレ, 秋田県由利本荘市

4本の柱のみで支持された、宙に浮く球体

秋田県由利本荘市で2011年にオープンしたカダーレ文化交流館は、不規則で有機的な魅力あふれるフォルムを持つ、ひときわ目立つ建物です。同館は1,100席の大ホール、図書館、プラネタリウム、ショップエリア、伝統的な茶室で構成され、様々な機能を有する驚くべき空間を提供しています。

建築家は市民との対話を設計に反映させ、組み込むという独特な設計アプローチをとっているため、建物の構造形態は自由に変容していきました。このプロジェクトの実現には、複雑な3D構造を設計することのできるアラップの能力がおおいに力を発揮しました。 

 

形態をモデリングする

アラップではライノセラスというソフト(通称ライノ)を使用して模型を3D CADデータに変換し、2つの目的、すなわち、構造解析と施工に利用しました。しかしながら、この2つの目的は矛盾をはらんでいます。つまり施工とは、設計を詳細に具現化するプロセスである一方、構造解析のためのモデリングは抽象化や簡略化のプロセスなのです。必然的にモデルは目的に合わせ2つに分離していきますが、アラップでは簡略化を最低限に抑え、実際のコンクリート形状をモデリングすることで、モデルを1つにしてそれを精緻化させていきました。

カダーレの建設は困難を極めましたが、建築家と共に3Dモデルを作成し、設計を具現化する際の変換リスクを軽減しました。この3Dモデルはコンクリートの型枠職人にも使用され、最終模型と全く同じ形態が建設されました。

 

空中に浮かぶ楕円球体の設計

この建物のもう一つの特徴は、図書館の上部に浮かぶ楕円球体で、その周辺はハイサイドライトで縁取られています。アラップは設計段階で様々な支持方法を検討しました。アラップが導き出したのは、球体をわずか4本の支柱で支えるというものでした。堅牢な鉄骨補強リングを球体外周コンクリート内に埋め込み、球体内部の鉄骨補強リングとの間を束材で接続することで950トンの重量の水平力抵抗要素を確保しました。

設計は市民との数々のワークショップを経て、魅力が増していきました。結果的に、前例のない建築空間が創出され、由利本荘市の新たな活動拠点とランドマークが誕生しました。