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静岡県富士山世界遺産センター, 静岡県富士宮市

水盤に浮かびあがるヒノキ格子の富士

2013年にユネスコの世界文化遺産に登録された富士山は「芸術家や詩人たちにインスピレーションを与え、何世紀にもわたり信仰の対象と芸術の源泉」とされてきました。この富士山の心揺さぶられるような自然美は、静岡県富士世界遺産センターのデザインの中心にも刻み込まれています。

アラップは、デザインコンペティションの段階からプリツカー賞受賞者である建築家の坂 茂氏と協働し、ダイナミックな「逆さ富士」型の構造と展示棟前面に広がる水盤に反射する象徴的な富士に敬意を表したデザインを提案しました。3,400m2の施設内には、らせん状の展示空間と美しい富士山の眺めをパノラマに切りとった見晴らしの良い展望ホールが設けられ、また観光地として楽しむだけでなく、文化的、精神的な日本の象徴について学ぶことができる教育研究施設も備えています。

プロジェクト概要


193m 5階まで繋がる展示棟のらせんスロープ

46m大屋根を支える逆さ富士構造の幅

20空調熱源エネルギー削減量

これまでにない新しい疑似体験

富士山が世界文化遺産に登録されたことを記念し、静岡県は富士宮市に富士山の世界遺産センターを建設する設計チームを選出するコンペティションを開催しました。 その200を超える応募の中から「逆さ富士」を連想させる坂 茂氏の案が選ばれました。 アラップはこのダイナミックなデザインを実現するべく、構造設計、設備設計、および環境戦略のサポートをしています。

世界遺産センターの大きな特徴のひとつとして、193mのらせん状のスロープがある展示棟の逆さ富士型の構造があげられます。ここでは、訪問者が展示を楽しみながら、日本で最も高い山である富士山の疑似登山体験を味わうことができます。

訪れた人たちを魅了する「逆さ富士」構造

訪れた人たちを魅了する「逆さ富士」の構造

逆さ富士型の構造の実現は、東海地震が懸念される地域においては特に難しい課題となりました。底部で直径 10m の円は高さ 14m の上部にかけて、長径46mの楕円形に広がり、広大な屋根を支えています。これは、建物全体の構造上、さらに建築的な意味でも必要不可欠な要素となっています。

この構造は、主に建物全体の長期荷重や地震荷重への抵抗のために、ラチス状の鉄骨で効率的に構成されており、さらに中央のコアや、らせん状のスロープ、外周の鉄骨間柱と合わせて全体の安定性を確保しています。

また、施工会社や鉄骨業者と密に連携し、適切な建方順序と精度確保の方法を検討しました。

豊富な湧き水の活用

建設現場周辺は、富士山に降り注ぐ雨や雪を源泉とする、豊富な湧き水で有名な地域です。 プロジェクト初期の調査で、富士山の湧き水は年間を通して15℃の水温を維持していることがわかりました。この湧き水を施設内の冷暖房システムに効果的に活用することによって、エネルギー消費量を20%削減することができました。

冷暖房システムに利用された湧き水は、植物の水やりに再利用されており、この建物の象徴ともいえる「逆さ富士」を反射する展示棟前に広がる水盤にも使われています。