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大分県立美術館（OPAM: Oita Prefectural Art Museum）は2015年4月に大分市の中心市街地にオープンしました。アラップは建築家と密に協力し、さまざまな催しものに対応できる柔軟性を備えた空間を実現するため、構造設計・設備設計の専門性を統合し多面的に協調しながら設計にアプローチしました。
フレキシブルなだけでなく、安全かつ快適な日本の縁側空間のような市民の広場として機能する、開かれた美術館が生まれました。
多機能かつ開放的な展示空間
1階の前面道路側85mの外壁には、全面、開放可能な14枚のガラスの水平折戸が並びます。この水平折戸を開放することで、街路とアトリウム空間が一体化し、自由に出入りができるパブリックスペースが生まれます。また、中間期には冷暖房のランニングコストを抑える役割も担います。
トラス梁によって2階の床を吊るすことで、1階に開放的な無柱空間を生み出し、可動式の間仕切りを採用することで、より多機能でレイアウト自由なギャラリースペースの提案を可能としています。
プロジェクト概要
28.5ｍ 最大スパン
6.0ｍ折戸の開放高さ
14枚水平折戸
開放的な空間の環境コントロール
水平折戸の開放時など屋外・アトリウム・展示空間が連続する場合にも、熱や湿気から作品を適切に保護するため、また緊急の給電停止や空調停止時にも対応できるよう、室内温度変化シミュレーションを行い設計や運営に反映しています。
見えない壁の検証
このように展示形態によって変化する空間に対応する技術が、高性能のエアバリアです。気流によって目に見えない空気の壁を作り、温熱環境の乱れやほこり、虫の侵入を防ぎます。アラップはCFD解析や現地試験を繰り返し実施し、エアバリアの性能を検証し各関係機関の承認を得るための十分なデータを集めました。
14枚のガラスの水平折戸 ©Hiroyuki Hirai
美術館を守る免震構造
1階の南面と側面を構成する2層吹抜けのガラスファサードを実現するため、耐震要素は邪魔にならない建物の背面のみに配置しています。このように、耐震要素の配置バランスが良くない建物は通常大きな地震に耐えるのが困難ですが、免震構造とすることでこれを克服しています。
大地震による揺れを建物上部に伝わりにくくする免震構造は、揺れに耐えるだけでなく、揺れを大幅に軽減し、来館者や建物、収蔵物に高い安全を確保し、機能性を維持します。OPAMは、災害時の避難所としての役割も期待されています。
大分の伝統を伝える
3階のホワイエ空間は、伝統的に受け継がれてきた竹細工を思わせるデザインとなっています。
3つの木格子を重ねた印象的な外壁には、耐震ブレースに製材、鉄骨柱には耐火被覆として集成材を使用しています。大分県産のスギ材など地元の材料を最大限建物に用いることで、より地域に根差したフレキシブルなコミュニティ空間を体現することに成功しました。
受賞歴
2015年度 JIA日本建築大賞
2016年度 RIBA 国際優秀賞
リーディング・カルチャー・デスティネーションズ・アワーズ 2015 アジア・太平洋部門最優秀新設文化施設
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