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ONOMICHI U2, 広島県尾道市

持続可能な建築・街作りの新たなモデルケース

ONOMICHI U2 は広島県尾道市の海沿いに建つ築70年の倉庫『県営二号』の内部に、近年サイクリストで賑わう尾道の新たな顔として計画されたサイクリスト向けホテル・レストラン・サイクルショップを含む複合施設です。このプロジェクトはイタリアのInternational Prize for Sustainable Architecture 2015にて金賞を受賞しました。

 

既存建物を再活用する構造システム

倉庫内に新設した建物の構造躯体は全て既存躯体と縁を切り、既存躯体に負荷をかけない計画としています。既存躯体と新設の2階屋根の間のクリアランスが300㎜程度しかないホテル棟は構成する部材を人力で運べる軽量鉄骨とし、全ての接合部をボルト接合で計画することで、既存建屋内という難条件下において5.5ヶ月という短工期での施工を実現しました。

また、将来的な建物の原状復帰を想定し、新設のコンクリート基礎は設けず、既存の倉庫床の土間スラブの上に無収縮モルタルでレベル調整をした鉄骨の基礎梁を回し、その上に55kg/m²と非常に軽量な鉄骨造の建物を載せる構造計画としています。

既存倉庫内に新設する建物は積雪や風荷重の影響を受けないため、構造体の坪単価10万円以下と非常に安価な建物が実現できました。

尾道の気候に寄り添うサステイナブルデザイン

年間を通じて豊かな日照と、穏やかで冷涼な海風を建物に取り込むため、既存倉庫の屋根開口や搬入口を自然採光や自然通風のために再利用しました。また、既存躯体を上手に残しかつその美しさを活かすために断熱付加範囲は最小限に抑え、輻射冷暖房により居住域だけを効率よく冷暖房する計画としました。

文化財として保存されるほど古くはなく、著名な建築家の設計でもない、普通だが街並みにとって大切な建築が、経済原理の中で日々失われ続けています。行政・民間事業主・設計者が柔軟に連携し、経済的にも成り立つ方法で建築社会資産(遺産ではなく!)を有効活用した今回のプロジェクトは、持続可能な建築・街づくりの新たなモデルケースではないでしょうか。