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Osaka Maritime Musuem; Osaka Maritime Musuem;

なにわの海の時空館, 大阪府大阪市

未利用地に建設された、大阪湾南港のランドマーク

大阪湾南港の埋立地咲洲地区に残されていた未利用地に建設された海洋博物館「なにわの海の時空館」は、この地区を活性化し新たな開発を促すランドマークとなりました。

博物館は陸上のエントランス棟、海中の海中道およびガラスドームに覆われ海上に浮かぶ博物館棟の 3つから構成されています。直径約70mの半球形状の単層ラチスシェルによるガラスドームは4層の展示スペースを内包しています。ドームの構造はラメラ格子に配された直径191mmの直線鋼管で構成されており、ラチスの節点を鋳鋼ノードとし、鋼管と突き合わせ溶接によって接合されています。また鋳鋼ノードには高張力鋼タイロッドが取り付けられています。節点のジオメトリーは、鋼管が平坦な四角形平面を形成するように規定されており、これによってドームを覆う外装システムに平面ガラスを使った反復するディテールを用いることが可能となりました。

ドームは固定荷重及び風荷重に加えて、地震力(水平・鉛直それぞれの方向に最大 1.0Gと0.7Gの加速度の組み合わせ)、波荷重(大きな台風と波の状況下で最大100kPa)に対して設計されました。

博物館棟の空調換気設備は、太陽光の降り注ぐ海辺でありながら快適な室内温熱環境を提供すべく設計されましたが、一方でドームの透明性や印象的なドーム空間としての質を損なわないように、ドーム表面を覆う“ラミメタル”が内部空間に影を提供しています。ラミメタルはパンチングメタルを中間膜に挟んだ合わせガラスで、そのパンチングの穴の大きさによって日射の流入を制御しているのです。ドームの表面に対する年間を通じた太陽軌道の解析から、日射量が最大となる部分には穴が小さくより不透明なラミメタルを、逆に日射量が少ない部分には透明ガラスをそれぞれ配置することで、視覚的な透明性と快適な室内環境とのバランスを最大限に考慮しています。

博物館の展示品は気温や湿度に敏感なものも含まれているため、室内環境は適正に制御される必要がありますが、ドーム全体に制御を施すことは非効率です。そこでそうした展示品はドーム内部のシリンダー状の“コア”に含まれる特別展示ゾーンに置き、この空間の室内環境制御を重点的に行っています。

アラップによるこのドームの構造設計は、 2001 年に英国構造技術者協会から構造特別賞を受賞しました。

 

施工について

工期が25ヵ月と短かったため、博物館棟の内部構造が完成した後に現地でドーム鉄骨を順次建て方していく(あるいはその逆)という工程は不可能でした。そこで現地から離れた鉄骨工場でドームを完全に製作するという決定がなされました。これにより、現地での工程と並行して工場でのドーム製作が可能となったのです。また工場で製作することによりさまざまな治具が利用できるようになることから、安全性や精度が確保されるとともに、ドーム据え付けに先立って鉄部の塗装やガラス外装の嵌め込みをしておくことも可能になりました。

ドームは4,100t吊りフローティングクレーンを利用して川崎重工業播磨工場から吊り上げられました。表面のほとんどをガラスパネルで覆われ、吊り上げ用の仮設リングや補強トラスを含めたドームの総重量は1200トンに及びました。吊り上げられたドームははしけに載せられた後、現地まで約80kmの距離を海上輸送しました。現地では再びフローティングクレーンを利用してドームを吊り上げ、内部構造を覆うように据え付けを無事に完了したのです。