言語の変更
JA
Stormen Kulturkvartalet; Stormen Kulturkvartalet;

ストーメン文化施設, ボードー

ノルウェーの都市ボードー市に建設された一際目を引く文化施設

ノルウェー北部、北極圏に位置するボードー市に、新たな文化施設ストーメンが誕生しました。海を臨む図書館と4つの劇場からなる施設は、山並みを背にしたフィヨルドの海岸に建てられています。意匠設計は、ロンドンを拠点とする建築家、DRDHアーキテクツが手がけました。

アラップはDRDHとボードー市政府の指名を受け、基本計画から竣工まで一貫して、音響、劇場計画、技術システムデザインを担いました。基本計画においては、機械・電気設備と構造も担当しました。名誉なことに、本プロジェクトは英国の建築雑誌AJ (The Architects’ Journal) が主催するビルディング・オブ・ザ・イヤー2014をはじめ、ノルウェー国内の建築賞ノルウィージャン・ステート・アーキテクチュア・プライズも受賞しています。

劇場施設の中核をなすのは、ストア・サル(大ホール)と名づけられた944席の劇場兼コンサートホールです。演劇とコンサートという異なる用途で使用するために、数々の革新的な技術が採り入れられました。劇場として使用する場合には、大きなステージと階高いっぱいに設けられたフライタワー、大きさが可変のオーケストラピットによって、演劇や映像の上映に適した空間が作り出されます。交響曲の演奏を行う場合には、従来の箱型のコンサートホールに姿を変えます。このホールの音響性能は世界的にも高い評価を受けています。ストア・サルは劇場とコンサートホール、いずれも質を落とすことなく機能を両立させた貴重な例といえます。

施設内には演劇・リサイタル向けの小ホールやコミュニティ・スタジオがあり、地下にはジャズとロック音楽向けのクラブもあります。各ホール、スタジオの音漏れに細心の注意が払われているため、全ての施設を同時に使用することも可能です。

ストア・サル(大ホール)は、アラップの劇場コンサルタントとDRDHアーキテクツの協働設計です。その結果、所用時間わずか1時間で、コンサートホールからプロセニアム劇場へとシームレスにかたちを変える、異例のフレキシビリティをもった空間が生まれました。

従来の舞台には必ずバックステージの空間が用意されていますが、ストア・サルの舞台は違います。舞台上のオーケストラ・シェルを構成するのは、天井から吊られた高さ14mの壁パネルです。このパネルは天井のレールに沿って一人で簡単に動かすことができ、劇場として使用する際には舞台袖の壁に収納される仕組みです。また、ステージ上部にある音響反射板と天井パネルは、上空で広げたり閉じたりすることが可能です。この天井パネルも劇場として使用する際には完全に折りたたまれます。このように壁・天井のパネルを可動とすることで、ホールの音響と意匠を劇的に変化させることが可能になりました。

また、客席の側壁と後壁部分には、音響特性を調整するスライディングパネルが隠されています。その他にも、舞台をさまざまな角度から照らすための、可動式照明用吊物機構、可動式のフライングバーを仕込んだフライタワーと、さまざまな講演に対応する仕掛けが用意されています。