2008年サラゴサ万博のためにデザインされたこのブリッジは、橋として対岸を結ぶという機能に加えて、内部はギャラリーとして計画されています。橋自体が万博の中心的なアトラクションとなっており、万博のテーマである水に関する展示が行われています。
アラップでは、建築家の作成した3Dモデルからジオメトリを取り込み、自社開発の構造解析ソフトGSAを用いて、カーブを描くブリッジの構造検討を行いました。鉄骨構造によって支持された薄いコンクリートとガラスが、ひし形の断面が絡み合うブリッジの形態を生み出し、全体として大きな3つの“pod=さや”を形成します。この“さや”は、展示空間としての役割だけでなく、火災時の避難計画上、煙を一時的に貯留する機能も担っています。
一方、ファサードの設計においては、合理性を持ったシステムとする上で、この“さや”形状が大きな課題となりました。アラップはファサードのジオメトリを分析し、パネルが基本的に同じ形状となるようなグリッドをつくりだすことで、構造的にも経済的にも適するソリューションを導きました。また、自然換気、雨水の排水にも考慮した外装は、内部の温度上昇をおさえ、展示空間を快適に保ちます。
施工において課題となったのは、時間的な制約とブリッジの複雑な構造だけではありません。地盤の状態も大きな問題としてチームの前に立ちはだかりました。結果としてスペインで最も長い、ドリル工法による杭基礎を採用しました。アラップチームはブリッジが完成し万博の開幕に至るまで、施工段階の業務に携わりました。