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名古屋造形大学, 愛知県名古屋市

機能性と持続可能性を満たす芸術系大学の新キャンパス

愛知県名古屋市にある名古屋造形大学は、地上4階・地下1階の総床面積20,881m2の大学です。キャンパス移転に伴い、2022年4月に校舎を新設しました。アリーナ、ライブラリー、ギャラリー、ホール、13の見世、巨大スタジオなど多彩な施設を有し、学生や職員に創造的で多様な、持続可能な学びの場を提供しています。

また1階には建物を貫くアートストリートがあり、地域住民に半屋外空間を提供し、アートを通じた地域交流も促します。

本プロジェクトにおいて、アラップは構造設計および環境設備設計サービスを提供することにより、象的でレジリエントかつ、持続可能なデザインを実現し、中部地方の将来の文化・芸術発展のための拠点づくりに貢献しました。

プロジェクト概要


104x104 スタジオサイズ

40m鉄骨トラス

300ピース格子壁

1Fのアートストリートやそこに並ぶ「見世」と呼ばれる小さな建物は、階段やブリッジで相互につなぎユニークで立体的な街路を生み出します。 © Shigeru Ohno

駅の上に建つ堅牢な構造物

耐荷重に制限のある名古屋市営地下鉄の名城公園駅の上に、キャンパスは位置しています。まず内部空間の自由度を高めるため、外側に耐震壁を配置しました。また、駅上部に荷重をかけないようにするため、鉄骨による層間トラスを採用することで最大40mのスパンを実現。建物は上部に向かってボリュームが増す形状をしていることから、4階の巨大スタジオをどのように支持するかの課題がありました。これについては、異なる4つ施設棟を4つのコアとすることで地震力を負担し、104m×104mのワンルームのような巨大スタジオを具現化しています。


印象的な格子状の耐震壁

建築計画上、各コアの内部に RC 耐震壁を配置することが困難であったことから、透明感の高いアウトフレーム型の SPC*格子壁を採用し、耐震性能を確保しました。SPC 格子壁は、建物質量・水平力の割合が大きい4階部分と基礎を繋ぐアウトフレーム型の耐震壁としています。各コアは、SPC格子壁で囲うことで内部空間に必要なRC耐震壁を最小限に抑えたサステイナブル空間とすることができました。

* SPC:鉄骨と従来のコンクリートよりも強度の高いプレキャストコンクリートを組み合わせたもの。

四方を巡る4階の屋外テラスは、オープンスタジオとして利用できます。 © Shigeru Ohno

快適性とエネルギー効率の高い環境

SPC格子壁は建物の構造や意匠性を満たすだけでなく、スタジオ全周のバルコニー同様に自然換気を促します。また、建物の空調システムの負荷やガラスで囲われた各棟の日射負荷の軽減にも寄与しています。
さらには、4階のバルコニーのインナーガラスをやや内側にセットバックすることによって生まれる庇は、各棟の空調負荷を抑える効果をもたらします。同階の2層吹き抜けの大空間は空調効率を考慮し、空気式空調機に加え、床輻射冷暖房を採用しました。これによって、床面からの放射温度をコントロールし居住域の快適性を向上させています。


持続可能な運用管理

施設運営面においては、電気系統は各専用室を含め、棟やフロアごとに細かく分けて運用されています。また、照明、空調、換気、給湯、コンセントなどの設備のデータや性能も個別にモニタリングしています。こうしたビルエネルギーマネジメントシステムの導入により、不要なエネルギーを10%削減。運用状況の把握が容易になることで、より効率的な施設管理が可能となります。

建物中央のアートストリートは学生や教員たちの作品や商品の販売・展示空間として機能し、地域の人たちにも開かれた半屋外空間を提供しています。