言語の変更
JA
; ;

ガードナー美術館, ボストン

光環境と自然との強い繋がり

ボストンのイサベラ・スチュワート・ガードナー美術館の新館増築にあたり、アラップは照明設計を担当しました。設計者のレンゾ・ピアノ氏が設計コンセプトとした、透明性と自然との繋がりの実現を目指して設計を行いました。

優れた遺産を21世紀へ

このプロジェクトでアラップは、昼光利用を用いた建物全体の照明と展示用照明の設計を担当しました。増築された6,500㎡の空間は、展示ギャラリー、音楽ホール、ショップ、教室、多目的オリエンテーションスペース、カフェ、オフィス、美術保存作業室、温室、そして美術館のアーティスト・イン・レジデンスのプログラムのための居住兼作業用の住居スペースが含まれます。

設計アプローチを決める際、設計チームはガードナー氏の歴史や使命を考察しました。本美術館は1903年に、芸術を支援していたイサベラ・スチュワート・ガードナー氏により設立されましたが、彼女はこれまでとは異なる、より深く、独自の美術鑑賞ができる空間を創ることを望みました。設立当初の美術館は15世紀のヴェネチアのパレスにならった3階建で、花で満たされた中庭に向かって開かれたギャラリーでした。ガードナー氏の遺書には、この建築物は彼女の生前当時のまま保存されなければならないと記されています。

1世紀を経て、新たな活動のためのスペースが必要となり、新館をつくることになりました。レンゾ・ピアノ・ビルディング・ワークショップがこのプロジェクトの設計者に選ばれ、周辺環境に適した、歴史的な敷地やその近隣環境を、より良いものにする設計が求められました。

自然との繋がりの創出

自然との密接な繋がりは、新館設計の全般においての特徴となっています。アラップの照明チームはこのコンセプトを理解し、通常では取り入れることが難しい展示空間においても可能なかぎり自然光を入れ、空間全体において自然光と人工照明のバランスを綿密に配慮して設計しました。

その他にもこのコンセプトは、さまざまなチャレンジの機会をもたらしました。音楽ホールにおいては、大きなトップライトを設けたことにより、楽器を調律するような、高度で繊細な調整が必要となりました。自然光と人工照明のバランスに配慮し、聴衆と演奏者の両方のグレアを抑え、そしてディテールに配慮しながらも、音質を保つことができる最適な素材をトップライトに用いました。

アラップは新館の照明設計において、昼光利用と人工照明を融合した総合的なデザインを提供しました。建物全体の昼光システムを実現するために、定量分析も行いました。人工照明の設計では、埋めこみ形や露出形照明、ペンダント器具などを空間に応じて設置し、建物全体を通じて視覚的効果が高まるように配慮しました。

展示ギャラリー

3層の高さを持つ展示ギャラリーの主要な光源には自然光を用いており、北に面したファサードとトップライトから光を取り入れています。 さまざまな作品や展示企画に対してフレキシブル性を提供するために、天井高さを3.6m、7.3m、11mに設定できる可動式設備に合わせて最適な照明設計を行いました。内外に3層の遮光レイヤーを設置し、展示に合わせて空間に入る光量をきめ細かく調整することができます。

またトップライトは、ガラスユニット内に独自のマイクロルーバーが設けられており、美術品を守るために全ての直射日光を遮る一方で、拡散光を空間内に最大限もたらします。

音楽ホール

音楽ホールのトップライトは外部に音が伝わらない構造となっており、閉じられた空間に自然光を取り込んでいます。特徴的なバルコニー型の建築に適した、特注の最新LED照明を製作しました。音響的に最適化されている各階の天井を、LED照明が柔らかく照らすことで自然光を補い、室内の光環境を保っています。

共用部・バックスペース

この建物では、保存作業室や管理部門の空間から、ガラスで囲われた既存建物へのアクセス部分やメイン階段まで、ほぼ全ての空間において、自然光が降り注ぎます。