言語の変更
JA
; ;

ROKI Global Innovation Centre -ROGIC-, 静岡県浜松市

自然環境を取り入れた研究開発施設

ROKI Global Innovation Centre(ROGIC)は、自動車産業向けを中心に、ろ過技術を提供する日本有数の企業ROKIの研究開発施設です。本施設は地上4階、延床面積約9,000m2、かつて宅地用に造成、放置されていた土地の地形を活かして建てられました。天竜川に隣接する池に面し、ガラスの大屋根とオープンプランのワークエリアが特徴です。

小堀哲夫建築設計事務所との緊密な協働のもとアラップは構造設計と環境設備設計を担い、利用者のクリエイティビティを促し、自然とのふれ合いを楽しめるサステイナブルなワークプレイスの実現に貢献しました。

本施設は、自然資源の活用によりエネルギー使用量を最小限に抑え、周囲の環境と調和しています。また、国土交通省主催の「住宅・建築物省CO2先導事業」のリーディングカンパニーに採択されました。


 

プロジェクト概要


80 自然換気増加量

30人工照明使用削減量

64×50m大格子屋根

自然冷却による省エネ

地形や山々に囲まれた緑豊かな環境を活かし、建築家とアラップは南側テラスの半屋外空間から北端の研究エリアまで、徐々に環境が変化していくデザインを提案しました。これにより、外気温より1.5℃低い天竜川からの森を抜ける風が建物内を吹き抜け、自然冷却と換気を可能としています。この風は、床ピットの熱交換器を通して運ばれ、予冷による省エネ効果をもたらします。春や秋の中間期は、冷涼な風を自然空調として直接取り込み、 暖かい空気は屋根の開口部から排出されるしくみです。

自然光が降り注ぐ開放的なオフィス空間。 © Kawasumi・Kobayashi Kenji Photograph Office.

自然換気による快適な居住性

半屋外空間実現のため、1年にわたり建物内の熱と換気の状態をモデル化するシミュレーションを行いました。その結果、自然換気の期間を延ばし、自然換気量を80%まで増加させています。さらには、機械による換気の必要性を最小限に抑えながら、利用者の快適性を最大限に高めました。


反射や眩しさを抑えた自然光の活用

自然光が降り注ぐ開放的なオフィス空間。格子状の大屋根には光の状態の微妙な変化に反応するROKI独自のフィルター素材を採用しており、日射量を抑えつつ眩しさを抑えた自然光を取り込みます。また、格子の見付けを細くすることでガラス面積と日射量を最大化し、格子によって室内空間へ落ちる影の影響を最小限に抑えています。  年間を通じて就業時間の30〜35%は無電灯で仕事ができると試算しています。

春と秋の中間期には、自然冷房として風を直接室内に取り込んでいます。 © TAKAHIRO ARAI

浮いているような大屋根

研究開発施設という用途から内部柱はできるだけ少なくする必要があり、また池に反射する太陽光を自然光として利用するための構造上の課題がありました。

4階の建物入口から2階の南テラスまで続く巨大な64m×50mの屋根を支えるため、南テラスにV字型の外柱2本と細長い内柱4本を設けています。それによって大屋根を支える部分を効果的に隠し、無重量感を演出しています。


より充実した業務環境

ラボエリアは、用途に応じて温度や湿度をコントロールするため均質な閉じた空間としていますが、その他のスペースはエリアごとに異なる環境のムラを利用したゾーニングをしています。 それにより利用者は、仕事の内容や目的に応じて、温度や湿度、明るさなどの好みから空間を選ぶことができます。これは、働く場所の自由度を確保するだけでなく、エネルギー効率の向上や、作業の質を高めることにも役立ちます。開放的かつ刺激的で、コラボレーションを促す豊かな自然環境のもと、クリエイティブなワークプレイスが実現しました。

屋根全面にトップライトを備える研究開発施設。自然環境に近いオフィスで緑を感じながら創造性を高め、リラックスできるワークプレイスとなることを目指しました。 © TAKAHIRO ARAI

受賞歴

第56回 BCS賞
第26回 JSCA賞(元所員:谷川充丈)
2015年度 日事連建築賞・国土交通大臣賞
2016年度 JIA日本建築大賞
2017年 日本建築学会賞 作品賞