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NOT A HOTEL NASU, 栃木県大田原市

新しいビジネスモデルとシームレスな宿泊体験を生み出す

栃木県大田原市の広大な牧場の一角に、別荘とホテルの両役割を満たす『NOT A HOTEL NASU』が2023年1月にオープンしました。この新しい宿泊施設は、これまでのホテル経営のあり方を変える可能性を秘めたユニークなビジネスモデルを採用しています。建物は別荘として複数のオーナーへ販売され、購入者は共同所有する形で施設を利用します。購入者の予約がない場合には、建主であるNOT A HOTELがホテルとして管理・運用するため、建物は1年を通して有効に活用されます。

NOT A HOTEL NASUは、「MASTERPIECE」と「THINK」 、2024年竣工予定の「CAVE」の3棟からなり、「THINK」は母屋と離れ(ANNEX)の2つの建物で構成されています。

施設は傾斜地の立地を生かし、建物の一部を地中に埋設することで、景観に配慮しています。また、施設は牧場に隣接しているため、高台にある客室からは16万坪の那須の高原や壮大な自然の景色を見渡すことができます。アラップはこの斬新でユニークなプロジェクトを実現するため、建築設計事務所のサポーズデザインオフィスと協働し、構造設計や環境設備設計、持続可能なデザインを提供しました。スマートな運営と質の高いデザインに関する新たな基準の確立にも貢献しています。

プロジェクト概要


16万坪 高原の眺め

10m幅巨大な開口部

3,000蔵書

スマートで持続可能な運営を可能にする

各棟にはスタッフルームを設けずに、オペレーターはオンライン上で利用者の到着を確認し、チェックインや開錠などを行います。各設備はKNXという設備制御システムに接続しており、センサーの取得データによって、設備の自動管理や遠隔操作を可能としています。

こうした管理方法を可能にするため、日本ではまだ実績の少ないKNXによる設備制御システムを採用しました。アラップはKNXシステムのベンダーであるSUMAMO(スマモ)と独自に設計・開発をすすめ、同システムをNOT A HOTELの全施設へ導入しています。アプリからは、電気・水・燃料の消費量なども把握することができ、省エネルギーの戦略的な支援にも役立ちます。

2階のゲストルームには、モニターと巨大なソファ、奥には自然の風景を絵画のように切り取る大きな窓を設置しました © Kenta Hasegawa

利用者がiPadのアプリ上から、冷暖房、温泉、窓の開閉、照明、床暖房、加湿器やサウナなど12種類ほどの機器を調整できるようにしました。これにより、提供するサービスの均質化をはじめ、利用者がどの施設を訪れた場合にもシームレスな操作を可能とし、ストレスなく滞在できるようにしました。さらには、より多くの人たちと建物を効率的に共有することやサステイナビリティへの貢献にもつながっています。


源泉掛け流しの温泉

施設内には各棟に専用の温泉を備え、いつでも好きな時に温泉を楽しむことができます。土地柄、豊富な湯量を確保できるため、湯を沸かすためのエネルギー消費量を最小限に抑えた、源泉掛け流しの温泉を実現しています。温泉の温度やろ過装置についてもKNXシステムで制御・監視することが可能です。

洗練されたデザイン

温泉の注ぎ口のデザインや、目に触れる場所にスイッチやコントローラーを設置しないなど、細部にまでこだわったデザインが施設内の随所にちりばめられています。シンプルでスタイリッシュな空間を味わいながら、広大な自然と開放感を贅沢に堪能することができます。

天井高6mをこえる吹き抜け、暖炉、煙突を備えるリビングダイニングの大空間。階段の奥にはキッチンを備えます © Kenta Hasegawa

眺望と開放的空間を最大限に確保する

建物は低層でスパンが比較的小さいため、主要構造はコンクリート構造です。リビングの長スパンを効率よく実現するためMASTERPIECEには鉄骨、THINKにはコンクリートの壁梁を採用しています。

天井を高くして垂れ壁を設けることで、暗めの室内から明るい屋外を眺められるピクチャーウィンドーが優雅な空間を演出します © Kenta Hasegawa

地震力はすべてコンクリート耐力壁で負担しますが、建物東側に位置する牧場の眺望を確保するため、建物東面には耐力壁を配置しない計画としました。 建物は斜面に建てられており、長期的に片側土圧を受けるため、土圧や地震に対して十分な強度と剛性を保てるよう各方向の壁量を確保した設計としています