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TOKYU KABUKICHO TOWER; TOKYU KABUKICHO TOWER;

東急歌舞伎町タワー, 東京都新宿区

新宿の新たなランドマーク「噴水」をモチーフにした超高層複合施設

高さ約225m、地下5階、地上48階建ての「東急歌舞伎町タワー」は、新たな新宿のランドマークとして2023年4月に開業した、新宿歌舞伎町エリア最大となる超高層の複合施設です。

東急株式会社と東急レクリエーション株式会社は、以前から保有していた大型映画館「新宿ミラノ座」跡地を、エンターテイメント施設とホテルだけで構成する建物として生まれ変わらせる計画としました。

かつて近くに川が流れていたことやシネシティ広場に噴水があったこと、現在も歌舞伎町弁財天が水を司る女神として祀られていることなどから、外装デザインにはこのエリアの根源的な要素である水を基調とした「噴水」がモチーフとして表現されています。

アラップは、東急歌舞伎町タワーを印象づける永山祐子建築設計による繊細かつ複雑な外装デザインを実現するため、ファサード・エンジニアリングサービスを提供しました。

プロジェクト概要


約225m ビルの高さ

277ガラスの印刷パターン

4,000セラミックプリントしたガラス

© Nacása & Partners Inc.

複雑なカーテンウォール形状と生産性の高い設計

効率的な客室配置と風環境を考慮した平面計画に沿ってデザインされた外装カーテンウォールは、平面的に特殊な6角形をしている上に、外装ラインはジグザグな形状をしています。そのため、アルミサッシの形状は、数十種類もの型材の組み合わせとなりました。


アラップは生産性と経済性を考慮し、これらの型材の数を最適化することや、セラミック印刷のパターンを最適化すること、さらには、アルミサッシの色とセラミック印刷の色を融合させつつ生産性を高めるためのアイデア(アルマイト加工と白いセラミックインクとの親和性)の提案など、あらゆる面で外装デザインの意図を尊重し、その実現のための技術的支援を行いました。

 

© Nacása & Partners Inc.

277通りのガラスパターンで描く「噴水」と「水の波」

ビルには「噴水」と「水の波」の2つの水を表現したガラスファサードが採用されています。噴水を模した、最頂部と中間部の山形のパネルには水しぶきを表現するグラデーションの細かい文様を印刷。水の波を表す窓には、セラミックプリントを用いて周縁に、1枚1枚白いアーチを描きました。

 


こうした複雑な外装デザインを具現化するため、アラップはプログラミングツールのグラスホッパーを駆使して、数千種類のガラスフリットのパターンを200通り程度に整理しました。最終的に、微妙な寸法調整などを経て277通りの型としています。

それぞれの型を組み合わせ約4,000枚以上のガラスにセラミックプリントを施しました。複雑で大量のデザインパターンをガラスに印刷する場合、インクジェットプリンターでパターンを印刷する技術(オンデマンド印刷)もあります。本プロジェクトにおいては高い耐久性が求められたため、シルクスクリーン印刷を採用し、1つの版を使用する回数を制限することで印刷精度と耐久性を確保しました。

超高層の外部ガラスにセラミックプリント

文様の配置は、VR(仮想現実)やモックアップで室内からの見え方も検証し、印刷位置をmm単位で調整しています。周辺の鉄道や道路などへの光反射の影響も検討し、ガラスの光学的性能と生活環境への影響も計算しています。

また、このような超高層ビルにおけるガラス外部表面へのセラミックプリントは日本では珍しく、耐久性についても十分に配慮しました。こうした繊細な文様の印刷は水を表現するだけでなく、建物の輪郭のぼかし効果や女性的で柔らかい印象にも繋がっています。

© Nacása & Partners Inc.

土地の歴史と機能性を融合したデザイン

全体のデザインコンセプトである水のイメージに呼応するように、建物の低層階を覆うスクリーンファサードに、水を意味する伝統文様の「青海波(せいがいは)」のシルエットになっています。青海波を表す鎖のような文様はアルミ鋳物のパネルで構成し、敷地にあった建物や旧新宿ミラノ座に敬意を表した赤茶色のグラデーションに塗装されました。


スクリーンファサードは、異なる色やパーツでユニット化したものを複数パターンで構成し、アーチ形状のデザインを表現しました。アルミ鋳物は下地となる防水パネルと一体化することで、柱形や軒裏の化粧パネルとしての役割を担い、防水性や耐震性といった機能的要求だけでなく、施工性を両立した構造となっています。

入念なメンテナンス計画

メンテナンスのためのゴンドラ、BMU(ビルメンテナンスユニット)は、高層部と中層部の特徴的なギザギザ形状のカーテンウォールを超えて稼働させる必要がありました。そこでパラメトリック設計を用いて、ゴンドラの位置とアームの能力を綿密に計算することで、パラペットデザインの正確な位置を決定しています。

メンテナンスをスムーズかつ安全に行える計画とするため、プロジェクトの初期段階から業者を含めた綿密な検討を行いました。ゴンドラは高層部と中層部に1基ずつとし、設置数を最小限に抑えながらもビルのメンテナンスを容易に行えるようにしています。